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メビウス
私が彼女を見たのはそれが最後になった。
私を襲っていた途中に、いきなり狂った様に飛び出しそのまま姿を消してしまったらしい。
きっと私の顔を見て俊行との約束を思い出したのだろう。
結局私は、彼女を助けるどころか苦しめていただけだった。
あれから半年が過ぎて、やっとこの日記で全てを知る事ができた。
この日記は持っていよう。
彼女の犠牲になった男たちの存在を忘れないために。
食い千切られた両足と、彼女を苦しめてしまった罪を忘れないために…
私は車椅子を手で押しながら玄関に向かった。
膝の上に置いた赤い日記…
私だけが大切に保管しておこう。
いつか普通に戻った時の彼女に渡せる様に…。
ドアを開けた。
そこには……
終
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