10秒スイッチ

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しまった、と勇一は思った。 銀行強盗が入ってきてから10秒はとうに経過していた。 虚を突かれ逃げるタイミングを逃したのだ。 ポケット内のスイッチを取り出そうとすると、強盗の一人がそれに気づいて歩いてきた。 「おい、そこのお前今なにしようとした!携帯か?」 「い、いえ、なにも……」 「ふざけるな、確かに見たぞ!」 サバイバルナイフをかざしながら、強盗は勇一のポケット内に手をいれようとする。 「や、やめろ!」 とっさに勇一は強盗を突き飛ばした。 その後にハッと我に戻る。 「てめぇ!やっぱり何かしてやがったな!」 「いや、ちがっ」 勇一の叫びは届かなかった。 始めに強盗のナイフは勇一の腹部を貫いた。 居合わせた人々の叫び声がやけに遠くに聞こえる。 着ていたシャツが真っ赤に染まる。 吐き気が込み上げたと思えば、大量の血を嘔吐した。 「ごほっ……やめ」 次にナイフは肺を襲う。 呼吸が苦しくなり足元がぐらついた。
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