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(やばいやばいやばい)
朦朧とする意識を辛うじて繋ぎ止め、勇一はポケットに手を伸ばす。
(間に合え間に合え!)
指先の感覚はもうすでに消えかかっていた。なんとかスイッチを取り出すと、強盗が少しだけ戸惑ったのが分かった。
スイッチを手にとって、しかしもうそれを押す力は勇一にはなかった。
(ああダメだ、もう10秒過ぎた)
倒れ行く体で勇一はなぜこんな事になったのだろうか、と考えていた。
自分はこのスイッチを使いこなしたはずだ。過ぎたことは考えず、分相応に。
こんなとこで強盗に会うなんて、なんという不運。
(いや天罰か)
ついに勇一は倒れた。
そして、その時勇一が強く強く握りしめていた10秒スイッチが乱暴に地面に打ち付けられた。
ボタン部分を地面に向けたまま。
ガチャン。
カシュ。
ひび割れ崩れる装置。
光を吐き出す粒子排出口。
その光景で勇一の意識は途切れた。
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