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それは大学入試を一週間後に控えた土曜の昼下がりの事だった。
来客を知らせる自宅のインターホンが軽快な音を鳴らす。
最初は気に留めていなかったのだが、家に自分以外誰もいないのを思い出し、日野勇一は仕方なく筆を止める。
「はーい、今行きますよ」
階段を駆け足で下って玄関の扉をあける。すると見慣れた緑色の制服を纏った男が目に飛び込んできた。
「どうも山猫宅急便ですが」
「はいはい、ご苦労様です」
「宛先の氏名が書かれていないのですが、住所はお間違いないでしょうか?」
そう言って差し出された小包には自宅の住所が記したあった。
差出人は知らない人物だったが、両親の知り合いの誰かだろうと勇一は推測した。
「はい、間違いないです」
「それではこちらに判子かサインお願いします」
小さな欄にサインを書き込むと、男は一礼して去っていった。
勇一はその荷物を適当にテーブルに投げ置くと、自室へと戻っていった。
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