10秒スイッチ

3/13
前へ
/13ページ
次へ
それから三時間ほど経った頃。受験勉強を続けていると、部屋の扉を叩く音が聞こえた。 両親が買い物から帰ってきたのだろう。 「勇一」 「なに?」 「これあなた宛の荷物じゃないの?」 勇一が部屋の扉を開けると、先程の小包を母が突き付けた。 「この差出人の東條さんってあなたの知り合いでしょ?」 「え?」 「あら、違うの?」 勇一は困惑した。この荷物はどうやら両親宛の物ではないらしい。 もちろん勇一は東條なる人物には一切心当たりがない。 母は押し付けるように勇一に荷物を渡すと、忙しそうに階下に戻っていく。 この不審な荷物をどうするか勇一は少し悩んだが、結局好奇心が勝り開封用のカッターを取り出した。 梱包の目にあわせてカッターで開封すると、出てきたのは一つのスイッチ、そして三十枚に渡る論文。 「なるほどな」 論文の冒頭の一文を読んで、勇一はようやくこの荷物の正体を理解した。 そこには『巻島物理科学研究所様へ』と書かれていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加