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それから三時間ほど経った頃。受験勉強を続けていると、部屋の扉を叩く音が聞こえた。
両親が買い物から帰ってきたのだろう。
「勇一」
「なに?」
「これあなた宛の荷物じゃないの?」
勇一が部屋の扉を開けると、先程の小包を母が突き付けた。
「この差出人の東條さんってあなたの知り合いでしょ?」
「え?」
「あら、違うの?」
勇一は困惑した。この荷物はどうやら両親宛の物ではないらしい。
もちろん勇一は東條なる人物には一切心当たりがない。
母は押し付けるように勇一に荷物を渡すと、忙しそうに階下に戻っていく。
この不審な荷物をどうするか勇一は少し悩んだが、結局好奇心が勝り開封用のカッターを取り出した。
梱包の目にあわせてカッターで開封すると、出てきたのは一つのスイッチ、そして三十枚に渡る論文。
「なるほどな」
論文の冒頭の一文を読んで、勇一はようやくこの荷物の正体を理解した。
そこには『巻島物理科学研究所様へ』と書かれていた。
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