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正確には時間を巻き戻すのであって、遡るの訳ではないのでタイムマシーンではないのだが。
いかにもインチキ臭い装置ではあるが、この送り主の東條博士が4次元空間に干渉する新粒子を発見したとして、数日前テレビで紹介されていたのを勇一は思い出した。
巻島物理科学研究所も民間研究所とはいえ、何人ものノーベル賞受賞者を輩出する著名な研究施設だ。
もしかしたら本物かもしれない、そんな考えが頭に浮かぶ。
勇一は机からノートとペンを取り出すと適当な文字列を書き込んだ。
そしてすぐさまスイッチに指をかける。
(これを押して文字が消えたら本物だ)
10秒以上経ってしまっては元も子もないので、覚悟を決める。そしてそのままボタンを押し込んだ。
カチリというスイッチの押し込まれる音と、カシュという何かが開く音が同時に響いた。
しかしそれだけだった。
もっと派手な結果を期待していた勇一は少し拍子抜けした。
(まあ、そんなわけないか)
そう思い諦め半分で見たノートには、何も書かれてはいなかった。
風にページが捲られただけかと思い、急いで前後のページを確認したが、それらしき文字列は一切ない。
試しにもう一度同じことを繰り返して見たが、再びノートは白紙に戻っていた。
「本物……」
思わず声に出る。手のひらに汗がじわりと広がるのが分かった。
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