10秒スイッチ

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そこから数日間、勇一は受験勉強を辞めた。 ひたすら送られた論文を解読し、このスイッチの原理を学んだ。そしてそれを元にいくつかの実験を繰り返し、装置の使い方を自分の物にしていった。 論文によると、スイッチが押されると同時に装置下部のシャッターが開き、そこからγ素粒子を出しているようだ。 故に、シャッターが開かないよう押さえつけながらスイッチを押した場合は何も起きなかった。 次にこの装置で遡行を体感できる、つまり時間が巻き戻ったと認識できるのは、使用時に装置の本体部分に触れている人間だけだった。 これは勇一の妹、文夏を使って実験した。文夏に宿題を教える名目で、目の前で宿題をやらせ、問題を解き終えた時点で時間を巻き戻す。 本体部分が文夏に触れている場合は、解いた問題が巻き戻った事に気付き困惑した様子を見せた。 しかし、本体が彼女の服にのみ触れている場合や、装置のボタン部分にしか文夏が触れていない場合は遡行に気づかなかった。 さらに偶然装置に付着した汚れから、この装置だけは時間遡行の影響を受けていないことも分かった。 使用しても汚れはとれなかったのである。
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