10秒スイッチ

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最後にもっとも大事なルールがある。 巻き戻せるのはどんなに長くても10秒だけ、つまり連続使用はできないという事だ。 これは10秒間時間を巻き戻すだけのγ素粒子を生成するのに、きっかり10秒かかるからだ。 何度でも10秒前をやり直せるが、11秒前には決して戻れない。これがこの装置の最後のルールだった。 たった10秒しか巻き戻せないが、それからの勇一の日々はバラのような毎日だった。 やり直せると言うことは失敗しなくなるという事だ。 まず事故やケガなどは万にひとつもなくなる。即死クラスの大ケガならば分からないが少なくとも手が一本動けばすぐさま事故前に戻れる。 犯罪もやりほうだいだ。殺人など巻き戻してしまったら意味のないものを除き、なんでもできる。 たとえば盗み。特にスリにはもってこいの能力だ。 バレたらすぐに時間を戻して無かったことにする、10秒の間バレなければ捕まる可能性は限りなく低いだろう。 これをやって3日で40万円ほど勇一は稼いだ。仕事をするのがアホらしいとさえ思う。 たとえば痴漢や覗き。これもスリと同じバレるまで続けて、発覚する寸前に戻ればいい。 たとえばカンニングは言うまでもない。これに関しては7、8秒ほど思い切り見ても構わないのだから、見る相手を間違えなければ100%合格できる。 勇一は絶望的と言われた第一志望の大学に見事合格した。
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