0人が本棚に入れています
本棚に追加
勇一がスイッチを手にしてから、数ヶ月経ったある日。
この日も勇一は小金を稼いでいた。スリにも慣れ、ここ最近はスイッチを使っていない。
稼いだ金も一気に入金すると怪しまれる恐れがあるので、定期的に一定額を入金するようにしていた。
この日はちょうど稼ぎをいくらか入金する予定の日で、勇一の足は銀行へと向かった。
まだ残暑が残るこの季節、銀行の自動ドアが開くと室内の涼しい風が一気に勇一の体を包む。
受付嬢のいらっしゃいませ、という声が重なる中、ATMへと向かっていく。
怪しまれない範囲に数万円だけ入金すると、その後表示された貯金残高に笑みがこぼれた。
その時だった。
「全員動くなっ!」
男の怒声が店舗内に反響した。
「おら、てめぇこれに金をつめろ」
人数は三人。全身迷彩柄の服に黒い覆面。
リーダーとおぼしき一人は拳銃を、連れの二人はサバイバルナイフをそれぞれ得物としていた。
金を入れるようバックを放り投げられた女性は、怯えながらも現金を入れていく。
「いいか、余計なこと喋ったり動いたりすりゃぶっ殺す。銀行員はその女以外、全員頭に手をのせてこっち来い」
最初のコメントを投稿しよう!