琉璃藍(リューリーラン)

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だから保は言ってやる。 「ブローカーの黒幕って、旅行会社だろ。それも団体旅行やってるような大手の」 高広は驚いた顔をしてやっと保を振り返る。 「――てめっ、何でソレ」 「俺も優秀な捜査官だってこと」 保はしてやったりとニッと笑う。 飛行機を降りた直後、何度も入国を重ねている阿木オーナーは少しだけ入国検査に手間取っていた。 それを待つ間、保はエコノミーから降りてきた、例のツアーの女性客たちに再び出会ったのだ。 そこでホストの習性か、それとも運命だったのか、 「よい旅を、お姉さんたち」 なんの気なく彼女たちに声をかけたのが、きっかけだった。 彼女たちは息子連れなんかではなかった。 同じツアーになった日本人ではない青年が、ひとりで不安そうにしていたのが放っておけなかったと言った。 そしてその彼は、再び日本に戻ることはないと言っていたと教えてくれた。 「あんなイケメンが日本からいなくなるなんて寂しいわ」 「あなたは絶対、日本に帰ってきてね」 賑やかで平和な彼女たちは、屈託なくそう笑って、保の周りでキャッキャとはしゃいだ声をあげた。 これから楽しい旅行が始まるのだ。 彼女たちの前には明るい世界しかない。 底辺で蠢く人間たちの、どす黒い現実なんて知る由もない。
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