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「もう後は、あのムッツリの仕事だ」
「龍さんもこっち来てるの?」
「あいつだけ日本で遊ばせておくかよ」
高広の目の下のクマを見れば、今回一番かしこく立ち回ったのは、有坂龍一ではないかと保は思う。
でもそれを言うと高広が激怒するから黙っていた。
ただ、
「ちょ帰る前に、俺に服買ってくんない」
財布も持たずに部屋を出てきた保は、高広に両手を合わせて頼みこむ。
「俺、この格好で歩いちゃ通報されかねないよ」
半身裸体で足元は裸足だ。
高広は、
「おーおー、MIKEでもALMANEでも、この国なら何でも手に入る。さっさと着替えてとっとと帰るぜ」
ニッと唇の端をあげていたずらっぽく笑った。
いつもの顔。
いつもの高広のしまりのない表情。
保もつられて微笑むと、
「そうだよね、俺お茶漬けが食いたいし」
高広の案に便乗する。
高広もうなずきながら、
「おお、俺は梅干とシャケな」
と言った後、ふと思い出して、
「あ、お前がいないから冷蔵庫が空だわ。飯も炊いてねぇ」
絶望的なことを言う。
「はあ?」
保は眉をしかめた。
「飯ぐらい炊けよ。この三日、何食ってたんだよお前」
何でもできるクセに何もしないこの相棒を、保は本当に放ってはおけないと思った。
Fin
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