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時々込み上げてくる嗚咽を堪えながら何とか最後まで話し終えると、ずっと黙って聞いていた楓はゆっくりと顔を上げた。
心なしか青ざめており、額には玉のように汗が浮かんでいる。
麻里の狂乱ぶりが、予想以上だったのだろう。
楓は一度お茶で口を湿してから、キッと強い瞳で佳奈子の顔を見つめた。
「────警察に行こう。佳奈子さん」
思いがけない言葉に、佳奈子は弾かれたように顔を上げる。
楓の瞳はしごく真剣で、冗談を言っている様は微塵もなかった。
「………え。………警察?」
おうむ返しに呟くと、楓は大きく頷いてみせた。
「下手したら殺されてたかもしれないし」
「で、でも」
「今日のことだけじゃない。……これからだって、狙われるかもしれないんだよ?」
楓の瞳には、はっきりと怒りの色が見てとれた。
おそらく、自分勝手な泉や、その怒りの矛先を佳奈子に向けた麻里のことが許せないのだろう。
「今回はたまたま腕のケガだけで済んだけど、次もそうだとは限らないんだよ? ……俺達は、自分と子供の身を守る権利があるんだから」
「─────待って!!」
今にも警察に電話しそうな勢いの楓に、佳奈子は思わずしがみついた。
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