対峙-2

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「………っ、だからって、ナイフで刺そうとするなんて常軌を逸してるよ! 現にケガだって……」 「こんな傷は、いつかは治る!」 勢いよく言葉を遮られ、その迫力に楓は一瞬気圧される。 楓が無言で佳奈子の顔を見つめ返すと、佳奈子の表情が苦しげに歪んだ。 「私のケガは、いつかは治る。……でも、あの人の心の傷は、一生消えないんだよ……」 「……………」 「これ以上、あの人のこと、苦しめたくないの……」 次から次に涙が溢れてきて、佳奈子はたまらず両手で顔を覆った。 「────私、泉さんのこと、許せないよ……。なんでこんな酷いこと出来るの?」 「……………」 「あんなに素敵な奥さんがいるのに、私と浮気して……。あげく一方的に別れ話なんて、酷すぎるよ……」 楓は浮かしかけていた腰を、再びペタンと床に落とした。 そうして真正面から佳奈子の両肩に手を置いた。 「………泉さんは、本気で言ったのかな。……佳奈子さんと結婚するつもりだ…って」 楓の疑問の言葉に、佳奈子はビクッと肩を揺らした。 ゆっくりと掌から顔を上げると、楓は射るような強い視線で佳奈子の目を見つめていた。  
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