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何度も何度も謝罪の言葉を口にすると、そこでようやく楓は表情を和らげた。
自分の腕に縋りついている佳奈子の手をやんわりと握り、少し強張った顔のまま小さく吐息した。
「………いや、佳奈子さんの選択は正しかったと思うよ」
「……………楓」
「誰だって、着信拒否された時点で見込みないなって思うもん。───俺も、そうだったし」
佳奈子に一切の連絡手段を絶たれた時の苦い記憶が蘇り、楓は小さな溜め息をこぼした。
あの時の絶望と怒りは、今思い出しても胸が痛む。
「まぁ、一方的すぎて気持ちにケジメつかなくて、どうせなら玉砕してやろうって、俺は待ち伏せしちゃったけどね」
苦笑しながら涙を拭われた佳奈子は、ふと真顔になった。
何か少し考え込む素振りを見せる。
しばらくして、佳奈子は思い詰めたようにキッと顔を上げた。
「………楓。……私、泉さんと一度会おうと思うの」
「───── えっ!?」
驚いた楓は大きく身じろぎした。
佳奈子の頬から手を離し、その手で佳奈子の両肩を強く掴む。
「な、何言ってんの、佳奈子さん!」
「………楓の言う通り、あの人の中ではまだ、ケジメがついてないんだと思うの」
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