対峙-2

27/32
前へ
/32ページ
次へ
何度も何度も謝罪の言葉を口にすると、そこでようやく楓は表情を和らげた。 自分の腕に縋りついている佳奈子の手をやんわりと握り、少し強張った顔のまま小さく吐息した。 「………いや、佳奈子さんの選択は正しかったと思うよ」 「……………楓」 「誰だって、着信拒否された時点で見込みないなって思うもん。───俺も、そうだったし」 佳奈子に一切の連絡手段を絶たれた時の苦い記憶が蘇り、楓は小さな溜め息をこぼした。 あの時の絶望と怒りは、今思い出しても胸が痛む。 「まぁ、一方的すぎて気持ちにケジメつかなくて、どうせなら玉砕してやろうって、俺は待ち伏せしちゃったけどね」 苦笑しながら涙を拭われた佳奈子は、ふと真顔になった。 何か少し考え込む素振りを見せる。 しばらくして、佳奈子は思い詰めたようにキッと顔を上げた。 「………楓。……私、泉さんと一度会おうと思うの」 「───── えっ!?」 驚いた楓は大きく身じろぎした。 佳奈子の頬から手を離し、その手で佳奈子の両肩を強く掴む。 「な、何言ってんの、佳奈子さん!」 「………楓の言う通り、あの人の中ではまだ、ケジメがついてないんだと思うの」  
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加