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「─────じゃあ、俺も行く」
ようやくのこと呟いた楓の言葉に、佳奈子は驚いて身をよじった。
「えっ?」
「だって、二人きりなんて危険すぎるよ。泉さんと話すんなら、俺も同席する」
「だ、ダメだよ!」
慌てて手を横に振ると、楓はムッとしたように佳奈子を睨み付けた。
「なんでだよ! 俺、佳奈子さんの夫だよ!?」
「だって絶対、冷静でいられないでしょ!」
「……………っ」
ピシャッと言い切られ、楓はグッと言葉を詰まらせる。
確かに佳奈子の言う通り、泉の顔を見た瞬間に殴りかかってしまいそうだった。
「…………でも」
「泉さんも、楓がいるときっと本音は言わないと思うし、変なところで意地になるかもしれない」
「………………」
「ちゃんとあの人と話したいの。───そうでなきゃ、私もきっと前には進めないから」
そこで堪らず、楓は再び佳奈子の体を強く引き寄せていた。
顔を佳奈子の髪に埋め、ぎゅっと目を瞑る。
「…………頑固だね、佳奈子さんは」
「────ごめん」
「でも、絶対に約束して。自分の体と赤ちゃんのことを、一番に考えて行動するって。………話がこじれそうなら、すぐに俺を呼ぶって」
震えた声から、楓が色々なものを我慢して飲み込んでいるのが伝わってきた。
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