対峙-2

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動揺と狼狽で、佳奈子は事態の半分も飲み込めていなかった。 麻里の言っている言葉の意味はほとんど理解出来なかったが、ただ一つ。 今、目の前で肩を震わせて泣いているこの女性が。 泉の奥さんなのだということだけは、理解することができた。 (どうして……どうして泉さんの奥さんが私に……? あの人、私のこと話したの?) 嫁とは別れられない、とキッパリと佳奈子にそう言った泉が、何もわざわざ浮気の暴露などしなくてもいいではないか──。 そこで佳奈子は、泉の最後の言葉を思い出してハッとした。 『もし俺の子なら、嫁とは別れて、お前と結婚する』 役所の前で聞いた、信じられない言葉。 あまりの泉の身勝手さに激昂し、自分は意識を失ったのだ。 あれから全ての着信を拒否し、それ以降何の音沙汰もなかったので、すっかり佳奈子のことは諦めたのだと思い込んでいた。 ────だが。 「………幸せ、だったの」 嗚咽混じりに麻里が口を開いたので、佳奈子はハッと我に返った。 無意識にバッグに手を伸ばし、お腹を守るように膝の上でそれを抱えた。  
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