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その夜、佳奈子はベッドに座りながらスマホの画面を見つめていた。
そこには、泉の携帯番号が映し出されている。
着信拒否する為だけに残していた、番号。
電話をかけようか迷ったが、麻里の顔が脳裏をよぎり一瞬佳奈子は躊躇した。
麻里の顔を思い出すだけで、傷口と胸がジクジクと痛み出す。
もし泉と麻里が同じところにいる時に電話などかけてしまったら、また大変なことになるに違いない。
さんざん逡巡したあげく、佳奈子はメールを打つことにした。
メールのほうが、いくらかリスクは少ないはずだ。
色々悩みながら、結局佳奈子は一度会って話がしたいという旨の簡潔な文章を送ることにした。
震える指で、送信を押す。
「………………」
メールを送信しました、の液晶画面の文字を見て、佳奈子はふーっと大きく息を吐き出した。
そのままゴロンとベッドに横になる。
だがついに、その夜泉から返事が返ってくることはなかった。
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