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「………よしっと」
ようやく昼ごはんが完成して、佳奈子はキッチンからリビングを振り返った。
苦手だった料理も結婚して二年、少しずつ上達してきている。
「あれっ?」
額に浮かんだ汗を拭いながら、佳奈子は首を捻った。
さっきまでお腹すいた、ご飯まだ?とうるさかった楓と娘の姿がない。
まだ決して手際がいいとは言い難く、いつも準備に時間がかかってしまうので、待ちくたびれてしまったのだろうか。
「パパー! 穂花ー! ご飯できたよー!」
キッチンから声をかけるが、返事はない。
ヤレヤレと溜め息をつき、佳奈子はエプロンを取ってそれを椅子にかけた。
サアッと和室の方から涼しい風が吹いてきて、佳奈子の汗に滲んだ額を心地よく撫でる。
ひょいと和室を覗いた佳奈子は、やはり、という思いで肩をすくめた。
「やっぱりここにいた」
スリッパを脱いで畳の上にあがる。
そうして窓際で、仲良く並んで仰向けで眠っている二人の元へとそっと近付いた。
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