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その時、別のスタッフがドアから顔を覗かせた。
「お母様に入ってもらってもよろしいですか?」
「はーい、どうぞ」
佳奈子の着付けをしてくれたスタッフが軽快に返事をする。
そうして佳奈子に横の椅子を勧めた。
「そしたらこちらに座って、お母様にベールダウンしてもらってください」
「…………はい」
「最後に、お二人でゆっくりお話してくださいね」
そう言うと深く腰を折り、頭を下げた。
佳奈子もそれに倣い頭を下げる。
スタッフが全員部屋を出ていくと、それと入れ替わるように母が部屋の中へと入ってきた。
「………………」
ドレス姿の佳奈子を見て、母は微かに目を見張った。
何だか照れ臭くて、佳奈子はへらっと微妙な笑顔を見せた。
その顔を見た母は、呆れたように苦笑する。
「せっかく綺麗にしてもらったのに、間抜けな顔するんじゃないの」
「間抜けって……ひどっ」
そこで二人は目を見交わせ、同時にクッと吹き出した。
ひとしきり笑ってから、母はまるで懐かしむように佳奈子の顔を見下ろした。
「………いつまでも子供だと思ってたのにねぇ」
「………………」
しみじみとした母の言葉に、佳奈子の胸がぐっと熱くなる。
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