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目も合わせたくない。
「もっ。こっち見ないなら、私から見せてあげるもんね。」
前言撤回。
俺はフルスピードで振り返った。
背後には太めのレディをキープ。
「もうっ。ずっと照れて隠れても、女子に嫌われるだけだぞ。えーんえーん!」
我慢できん!
ウザい! 果てしなくウザいです!
こいつはレディじゃなくてデブだ!
ぶりっ子だ! 面倒だ!
「あっ、やっとこっち向いてくれた。目、合わせてくれたんだよぉ。ね、たくみん!」
ハイ。諦めました。
『将来はたくみんのお嫁さんになるんだからねっ』の人、もうご自由に。
「えー、誰、このブサイク女? あっ、まさか、浮気? たくみん……酷いわ」
ブサイク女って……。
色々突っ込む元気もストレスに変わっていく。
「第一俺はお前と結婚した覚えはない」
「もうっ。たくみんの意地悪! こんな美少女・ミキコ様が目の前にいて、意地っ張りにも程がありましてよ?」
口調が転々と変わっていく。
ついていけねぇ……。
「あらっ? なあに、このキーホルダー。かっわいい~」
「おいっ」
ミキコお嬢は、俺の手からミサイルの速さで恐ろしいグッツをひったくっていった。
待て待て待て待て!
「返せ! 大事なもんなんだ、俺の……」
「きゃあっ。たくみんのなの~ぉ? まさか、お手製。嬉しいわ! 私の為に、いつもありがとうなんだし~」
は?
って、だから待てって!
「嬉しすぎますわ! もっとたくみんと居たいんだけどぉ。このキーホルダー、帰ってから金のスクールバッグにつけるからね。なくしちゃったら大変だからねっ」
是非なくしてください!
このままこいつにキーホルダーを持って行かれると、こいつは俺の事をもっと好きに……。
ゾゾーーーッ!!
身体中から血の気が引いた。
「さようなら。おーっほほほほ!」
ビューンと砂埃を巻き上げて走り去っていくドレスのデブ。
「だから、お願いだから待てっつってんだろぉぉ!!」
しかし、行ってしまった。
されど、行ってしまった。
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