化猫ノ園

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見つけてしまった。 地社猫駅前商店街の、幻の21店舗目。 『化猫ノ園』。 木で出来た時代遅れな看板もまだ綺麗で、金色の文字が光る。 空のショーケースは虹色に光を反射している。 レストランのような重そうな木製ドア。 不気味にそびえ立つ店が、そこにあった。 嘘だ。ありえない。 喜びも怖さも驚きも置いておいて、俺は21個目の店の前につっ立っていた。 みんなも、周りによくあるだろ? 都市伝説やら、学校の怪談やら。 絶対誰かが作った、としか思えないアレ。 そのアレを信じない俺が、今日、初めてこの目で都市伝説を見た。 最近噂になってる、ぴったり20店舗の商店街の21軒目。 店の名前は、『化猫ノ園』。 話によると、魔法が使えるようになるアイテムが売っているらしい。 これを聞いたときは、「どんなファンタジーゲーム仕様だよ」と半笑いで馬鹿にしたが、いざ現物を見てみるとでは話が違う。 今目の前にあるのが、それだ。 どこから見ても、本物の、普通の、店だ。 ただし幼いときから住んでいる町の知らない店。 緊張しながら考える。 そもそも、こんな怪しい店に入る必要あるのか? ヤバくなっても、自己責任だ。 しかし、俺には夢がある。 わざわざ今日、友達とのカラオケもパスしてまで誕生日プレゼントを買いに来た理由がある。 よくクラスにいるだろ、可愛い女子が。 この後、誕生日プレゼントを渡すとき、まず第一ステップとしてこう言う。 「これ……家にあったんだ。今日誕生日なんだって? ああ、気にすんな、俺、クラスの全員に誕生日プレゼントあげてるから。遠慮すんなって」 家にあった。 ここが重要だ。 姉妹の居ない俺には少々難易度が高いが、女子が「キュン」とすれば問題ない。 ノープロブレム。 その後、キラリと歯を見せて笑う事も重要だ。 ……歯ブラシも買おう。 最終的に、向こうから「優しいところがずっと好きだったんですっ。付き合ってください!」と言ってもらえるのも時間の問題だ……。 この一連の流れのスタートを切るのが、誕生日プレゼントの購入だ。 文房具か髪飾りか迷う。 文房具の方が、難易度が低いと考えられる。 髪飾りを渡して、「キモ……」なんて言われたら元も子もない。 しかしよく考えてみると、その子は髪を後ろで束ねて、ぽにー……なんとかにしていた。 よし。勇気を出して髪飾りを買う。
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