化猫ノ園

5/7
前へ
/15ページ
次へ
「……誰ですか」 まさか、店主の娘じゃないだろうな。 だったら、こんな「一億円~」とか言う狂ったチビ……んっんー、女の子がいる店には来たくない。 「たっくん! 今、チビって思った! キャキャのこと、チビって思ったぁッ!」 きゃ、きゃきゃ? それにそうだ、たっくんって……。 「ってお前、どこで知った?!」 「えーとねー、キャキャの情報網は、さい……えっとなんだっけ。そう、さいせんたん、なのだっ。」 俺の名前は、タクミ。 拓に海で拓海、だ。 近所のオバチャン……んっんー、ご婦人には「たっくん」と呼ばれている。 学校でもトップシークレットだ。 友達と一緒に下校して、不運な事に「たっくんこんにちは~」とご婦人から挨拶を食らっても、人違いなフリをする始末。 きっと多分幼馴染のあいつにだけはバレてるだろうけど。 でも、こいつが知ってるのはおかしい。 「情報網って、どこで聞いた?!」 「いまー」 今?! 俺が、自分はたっくんですー、と?! 言うかよ! 「もう一つ、答えたげる。私が店主の、キャキャ!」 えっへん! と威張る、自称店主。 ……嘘ぉ?! 「おまえが、店主?!」 「ん? そう! キャキャがてんしゅー。」 はあ?! だって、外見年齢は10歳未満、知能年齢は推定5歳未満。 そいつが店長なわけあるか。 「ほら、お父さんか店長さんか呼んで」 「言ってるもんっ。店長、店主、キャキャだもん!」 頬を膨らませて抗議するキャキャ。 いや、そんなわけない。 小さい子の冗談だ。 「証拠は? 証拠はあんのかよ」 「ついてきて」 細い足で、空っぽのコンクリート部屋を歩いていく。 「ついてきて!」 あ……ああ、悪い。 半信半疑で真正面へと進んで行くと、目の前でキャキャはいきなりしゃがみこんだ。 踏みそうになる。 「あっぶねぇ! なんで止まるんだよ」 「いらっしゃいませ、山崎拓海様。本日は『化猫ノ園』へお越しいただき、誠にありがとございましたぁっ。」 い、いきなりなんだよ……? 「トーテンは、香水にお菓子、文房具にお洋服といった、いろんな品物があります。ぜひ一度、化猫ノ園でお買い物ください。」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加