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「……誰ですか」
まさか、店主の娘じゃないだろうな。
だったら、こんな「一億円~」とか言う狂ったチビ……んっんー、女の子がいる店には来たくない。
「たっくん! 今、チビって思った! キャキャのこと、チビって思ったぁッ!」
きゃ、きゃきゃ?
それにそうだ、たっくんって……。
「ってお前、どこで知った?!」
「えーとねー、キャキャの情報網は、さい……えっとなんだっけ。そう、さいせんたん、なのだっ。」
俺の名前は、タクミ。
拓に海で拓海、だ。
近所のオバチャン……んっんー、ご婦人には「たっくん」と呼ばれている。
学校でもトップシークレットだ。
友達と一緒に下校して、不運な事に「たっくんこんにちは~」とご婦人から挨拶を食らっても、人違いなフリをする始末。
きっと多分幼馴染のあいつにだけはバレてるだろうけど。
でも、こいつが知ってるのはおかしい。
「情報網って、どこで聞いた?!」
「いまー」
今?!
俺が、自分はたっくんですー、と?!
言うかよ!
「もう一つ、答えたげる。私が店主の、キャキャ!」
えっへん! と威張る、自称店主。
……嘘ぉ?!
「おまえが、店主?!」
「ん? そう! キャキャがてんしゅー。」
はあ?!
だって、外見年齢は10歳未満、知能年齢は推定5歳未満。
そいつが店長なわけあるか。
「ほら、お父さんか店長さんか呼んで」
「言ってるもんっ。店長、店主、キャキャだもん!」
頬を膨らませて抗議するキャキャ。
いや、そんなわけない。
小さい子の冗談だ。
「証拠は? 証拠はあんのかよ」
「ついてきて」
細い足で、空っぽのコンクリート部屋を歩いていく。
「ついてきて!」
あ……ああ、悪い。
半信半疑で真正面へと進んで行くと、目の前でキャキャはいきなりしゃがみこんだ。
踏みそうになる。
「あっぶねぇ! なんで止まるんだよ」
「いらっしゃいませ、山崎拓海様。本日は『化猫ノ園』へお越しいただき、誠にありがとございましたぁっ。」
い、いきなりなんだよ……?
「トーテンは、香水にお菓子、文房具にお洋服といった、いろんな品物があります。ぜひ一度、化猫ノ園でお買い物ください。」
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