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ドアは開いていた。
店を出ると、通行人が戻っている。
振り返ると何も無い。狐に包まれた気分だった。
右手に握ったラッキーチャーム。
そうか。これが魔法の商品か。
「あれ?」
……待てよ。
この声は……?!
「タクミくん! 偶然だね、ここで会うなんて」
そうだ。
俺の、好きな子だ。
名前は藍柿なつ。ニックネームは、ナチチ。
好きな食べ物はイチゴグミ、嫌いな動物はヘビ。
誕生日は8月7日、一人っ子でいとこは4人、最近ハマっているものはクマのぬいぐるみ集め。
ほしぞらふたり幼稚園を卒園、谷川小学校を卒業、明日田中学校を卒園。
好きなタイプは面白く誠実な人。
俺の将来のヨメだ。
「や、やあ! 偶然だね!」
「タクミくんこそ。どうしたの?」
浮かれてるだけです。
なんて言えるわけ無い。
あ。右手のキーホルダーを思い出した。
ここは、少しキザに。
「あ……あのさ、これ、さっきクジで当てたんだけどな、俺さ、あんまりこういうの使わないんだ。良かったら使ってくれないか?」
「え? いいの? 今日はツイてるかも。ありがとう、それなら遠慮せずもらっちゃうね!」
キターーーーッ!!
神様!
ついに俺はやりました!
「かわいいー。あ、このクマのチャームと合いそう。同じピンクだし。早速つけていい?」
いいですとも!
藍柿は、星のキーホルダーを白いリュックに付けた。
陽を受けてキーホルダーがキラキラ光る。
いや、その光だけでは無かったかもしれない。
いきなり、
「きゃっ?!」
ちょっとだけ、藍柿は立ち眩みを起こした。
「藍柿?!」
藍柿はすぐに元に戻ってしまったので、支えることは断念した。
悔しいが、今は放っておく。
「た……くん?」
ぼーっとした藍柿から飛び出した言葉は、まさかの。
「たっくん?」
何故だ……何故こんな不幸が。
クラスメートの、しかも好きな子に『たっくん』、か。
うん。わがままを言ってはならない。
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