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昔昔、あるところに金持ちの男がいた。
その男は女癖が特に悪く、女房にも内緒で女遊びに出掛け、金を費やすほどであった。
なんと妾は三人いたと言う。
それぞれ名前を松、竹、梅といった。
ある夏の晩、男は女の梅の元へ出掛けようとした矢先、家前の庭で女房に見つかってしまう。
「あんた、どこ行くんだい」
女房は、男の一張羅の着物を横目で見ながら聞いた。
男は咄嗟に女房に嘘をついた。
「にっ...庭仕事だっ」
何故と問う女房に、男は
「昼間は日が出ていて、汗が溢れて仕方ない。今宵は涼しい故、庭仕事をするのだ。」
そうかい、女房は訝しげな目で一瞥し、そう言うと家に引っ込んだ。
やれやれ、男は溜息をつく。
今日は特に仲の良い梅との約束であった。
そのこともあってか、女房を騙せたからか機嫌がすこぶる良かった。
半ば跳びながら、女の家に向かう。
しかしその夜道の途中で大きく転んでしまった。
一張羅の着物が汚れ、はたまた一部破けてしまった始末だ。
この着物は名高い店で買ったものであり、値段も張るものだったので男は顔を赤くし怒った。
丁度、来た道を見ると道に長いものが横たわっている。
それは青大将であった。
男はそれが転ぶ原因だと分かるやいなや懐から小刀を取り出し、蛇の首に振りおろした。
頭無くした蛇は暫く、糸蚯蚓(いとみみず)の如く這いずり回っていたが、やがて静かになった。
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