エピローグ

3/13
前へ
/359ページ
次へ
 今日は漁協の取材があった。  競りや出荷の様子を遠巻きに撮影して、邪魔にならないよう取材は一段落してからという手筈だった。  待機の時間に海岸の防波堤を歩いてみたら、弥生さんが物憂げに水平線を見つめた。  シャッターチャンスのような気がして、そっとそばを離れた。  シャッターを切る頃には、弥生さんは両腕を天に向かって伸ばして、全身に余すことなく太陽を浴びさせていた。  フレアスカートが秋風を孕ませて揺れた。  それはまるで、波と太陽と風を操ってるかのようで。  響く写真が撮れたと思う。  後で本人に確認してから、コンテストに応募しようかと考えた。 「仁王立ちの、いい画が撮れました」  俺の存在をすっかり忘れていたように、振り返った弥生さん。  さっきの姿勢をデフォルメして真似して見せた。 「そんなにガニ股じゃない。モデル料もらうから」 「じゃ、夕飯奢りますよ。何食べます?」  弥生さんがこうした誘いにほとんど乗らないことは分かってた。  まただ、返事は憂いのある笑顔で誤魔化された。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2249人が本棚に入れています
本棚に追加