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「よう言うた。それでこそ、世界の本多 塁や!」
「待ってください2人とも! 私は承諾しかねます!」
「そう言うたるな、千鳥。俺らの仕事はなんや?」
「ですが…っ!」
「お願いします、千鳥さん! オレ、どうしても…どうしても帰りたいんです!」
塁のまっすぐで真剣な眼差しに、千鳥は軽くため息をついた。
「…その言葉には弱いんですよね。わかりました。」
千鳥は椅子から立ち上がり、部屋の隅にある学習机の引き出しを開けた。
「そこに飛び込むと、過去に戻れるんですね!」
「んなわけあるかい。漫画じゃあるまいし。」
「私達が使うのはこれです。」
千鳥が引き出しから取り出したのは、
「…ハリセン、ですよね?」
「一見ハリセンに見えるこれこそが、我らが頭脳、ドクター市松開発のタイムマシン『記憶吹っ飛ばしくん3号』や!」
「すんません、やっぱキャンセルします。」
塁が立ち上がるより早く、唐草がその背後に回り込み、椅子の背もたれに塁を体を、ロープでぐるぐる巻きにした。
「ちょっ、なにするんですかっ!」
「どうなっても構わん覚悟があるんちゃうんか!」
「覚悟はあるけど、どう考えてもそれじゃ帰れねぇだろ? てか、何だよ、不安しか煽らないそのネーミング! 帰れない上に、危険しかないとわかって、なお挑むヤツがいるかっ!」
「高校球児らしく、こっちの『記憶かっ飛ばしくん3号』でもええで。」
馴染みのありすぎる、ハリセンと同サイズ程度の金属棒を突きつけられ、塁は椅子ごと立ち上がった。
「まあ、これは発明品でも何でもない、ただの金属バットなんやけど。」
「助けて、お巡りさーんっ!」
「本多くん、落ち着いて。大丈夫ですよ。こんな形でこんなネーミングですが、性能は確かです。」
ハリセンから伸びるUSBケーブルをパソコンに繋ぎながら、千鳥が説明する。
「この『記憶吹っ飛ばしくん3号』で頭を叩くことにより、記憶のみを過去に飛ばすんです。」
「ようわからんけど、タイムマシンあるあるで、その時代の自分に会ったらアウト、みたいなのあるやん? だったら記憶だけを過去に戻したらええんちゃうか、って。」
「記憶だけ戻しても何も変わらないんじゃないですか?」
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