第3章

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 「決勝戦当日、事故に遭う前の本多くんがいます。その本多くんは、この先事故に遭うことを知らない本多くんです。そこに、事故に遭うことを知っている、今の本多くんの記憶が吹っ飛んできます。すると…」  「いつも通り、朝の占いを視てから出かけると事故に遭うことがわかっているから、早めに出たり遅めに出たりできるオレになれる、ってことか!」  「ラッキーカラーとか占いとか、好きやなぁ、お前。」  「『記憶吹っ飛ばしくん3号』の効果はそんな感じです。リーダー。」  千鳥からハリセンを受け取り、唐草が塁の前に立つ。  「最終確認や。ホンマに、帰ってええねんな?」  「はい! お願いします!」  塁は座り直し、力強くうなずいた。  「7月21日 午前6時 設定完了しました。うまく作動しますように!」  「えっ?」  手を合わせて、祈るような格好の千鳥に、一抹の不安を感じ、塁は腰を浮かしかける。  「市松抜きで使うのは初めてやもんな。行くで、本多!」  「やっぱやめ…」  「うらあああああっ! 行ってこいやああああーっ!」  フルスイングでハリセンを振り下ろす唐草。  あまりの勢いに、口元の布が大きく捲れ上がる。  それはほんの一瞬だったが、塁は確かに見た。  あらわになった唐草の口元に、この上なく邪悪で狂喜に満ちた笑みが浮かんでいたのを。
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