第4章

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 不思議な感覚だった。  目覚めると、これから起こることが、明確な映像となり、一気に頭の中に流れ込んできた。  何がなんだかわからず、不安に駆られ、あと少しで叫びそうになった。  最後の映像が入ってきた時、自分の身に起きていたことがわかった。  (そうか…どうしても帰りたいって、あの人達に頼んで……)  スマホを起動させ、日付を確認する。 7月21日 6時2分  (本当に…帰ってきたんだ。)  笑いと震えが湧き上がってくる。  帰ってこれて嬉しいような、とんでもないことをしてしまった怖さのような、かつて味わったことのない感情。  何度か深い呼吸をし、ようやく冷静に考えられるようになってきた。  (本当に帰って来れたんだ。このチャンス、有効に使わないと!)  欠かさず視ていたテレビの占い、内容はわかっている。  『何をやってもうまくいく、最高にラッキーな1日!』  大間違い。  事故に遭って、全てパァになったじゃないか。  占いコーナーが始まる前、いつもより少しだけ早く出かける。  車と接触した交差点。  少し緊張しながら横断歩道を駆け抜ける。  無事渡り切り、振り返る。  しばらくして、見覚えのある黄色い自動車が交差点に差し掛かる。  何事もなく左折して遠ざかって行く接触事故の相手を見送り、ようやく本当に安心できた気がした。  「よしっ!」  気合いを入れ、学校に向かった。  その後の人生は、塁が思い描いた通りに進んだ。  地区大会優勝、その勢いそのままに、全国制覇。  凱旋パレード、全球団からの1位指名、憧れの球団に入り、大活躍の1年。  ここまでは順調だった。  メジャー行きの話は合ったものの、球団同士の都合などで流れ、2年目も同じ球団に留まることになった。  憧れていた球団なので不満はなかったが、その年から就任した監督には大いに不満だった。  考え方、性格、何もかもが合わない。
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