第4章

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 小さな衝突を繰り返し、やがて、  「てめぇが監督やってるところになんかいられねぇよっ!」 大爆発を起こし、試合をボイコット、そのまま解雇となってしまった。  他のチームから声がかかるだろうと、気楽に考えていたが、どこからも呼ばれない。  以前話が合ったメジャー球団も、この一件を聞き、そんな選手はいらないと、はっきり断ってきた。  (こんなザマじゃ、帰ることもできない…)  そう思いながらも、気がつけば塁は故郷の土を踏んでいた。  (何でこんなことに…)  あの時無理にでもメジャーに行っていたら?  監督にぶち切れなければ?  その後、ボイコットせずに、しっかりと謝罪していれば?  (戻りたい…こんなことになる前のあの頃に帰りた……)  脳裏に浮かぶ、唐草と千鳥。  (そうだ、またあの2人に頼めばいいんじゃないか!)  不確かな記憶を頼りに、塁は駆け出した。  (確かこの先に…)  民家もまばらな寂れた場所、荒れ地に佇む、年季の入ったスーパーハウスが1棟。  「あった!」  スーパーハウスに駆け寄り、勢いよくドアを開ける。  「唐草さん! 千鳥さん!」  部屋の中には男が2人。  しかし、それは塁が知っている2人ではなかった。  黒スーツにサングラスのいかつい2人。  突然飛び込んで来た塁に鋭い視線を向ける。  「誰や、お前。」  「え、あの……」  「もしかして、本多選手じゃありませんか?」  「なんや、千島。知り合いか?」  「違いますよ、唐沢さん。野球の本多選手。ですよね?」  「あ、はい。本多、です。」  「野球の? ああ、あれか。監督に食ってかかって、クビになった。」  「そうです。その本多選手ですよ。」  「で、その本多が何でこんなトコにおるんや?」  「以前ここにいた2人に用があって…」  「残念やったなぁ。あの2人、俺らにカネ借りたまんま、トンズラしたで。」  「えっ?」  「昨日来た時にはいたんですけどね。夜のうちに逃げたようです。」  「そ…そんな……っ」  ショックを隠せない塁。  しかし、黒い2人は更なる追い討ちをかける。  「お知り合いみたいですが、連絡先とかご存知ありませんか?」  「知りません。以前1度助けてもらっただけで、それ以来交流ないし…」
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