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「消えちまえええッ!」
「やっかましいわっ、ボケぇ!」
スパーン!
小気味よいハリセンの衝撃音で、塁はハッと目を開ける。
「あ、お帰りなさい、本多くん。」
状況が把握出来ずに、目をパチクリさせる塁。
「こ…ここは……お2人は…」
「まだ寝ぼけとるんかい。もう1発、行っとくか?」
ハリセンを構える唐草模様作業服の男。
「ここは、帰宅戦隊カエリタインジャー本部。我々はそのメンバー、リーダーの唐草と、補佐役の私、千鳥です。」
唐草を制しつつ、丁寧な口調で説明する、千鳥格子模様作業服の男。
「唐草さん…千鳥さん……そっか、オレ、戻ってこれたのか! よかっ…た……っ!」
椅子から滑り落ち、床に崩れたまま、泣き笑いする塁に、2人は顔を見合わせた。
「泣くほどひどかったんかい。吹っ飛ばしくんが見せた、やり直しの人生。」
「吹っ飛ばしくんが、見せた? あれって夢だったんですか? 本当に記憶が過去に飛んで行ったわけじゃなく…」
「ホンマに記憶を飛ばせるようなモンあったら、大問題やで。」
「吹っ飛ばしくんで叩いた瞬間、被験者の思考や行動パターンなどを瞬時に読み取り、被験者が過去に戻った際に起こしそうなアクションを映像化し、脳内に投影する、みたいなことを、以前ドクターが言ってました。そうですね、夢みたいなものです。」
「夢か……よかった…あれが本当の人生じゃなくて…」
「どんだけひどい人生だったか、ちょっと聞かせ…」
「聞いてください、2人ともっ!」
塁は興奮気味に、一気に話始めた。
「そうですかか。大変でしたねぇ。」
応接用のテーブルに席を移した3人。
塁の話を聞き終え、唐草が口を開いた。
「でも、ええ経験したな。」
「どこがいい経験なんですか!」
「過去の失敗を1個修正したところで、万事OKってことにはならん、て学習できたやろ?」
湯呑みに注がれた梅昆布茶を一口飲み、唐草が続ける。
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