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「生きてる限り、選択の連続や。大きな選択はもちろん、何時に家を出るだとか、どんな服を着るだとか、選んでいる意識すらないような選択肢にさえ、運命を左右されることだってある。無意識に選んでいることだから、どんだけあるかわからん。たぶん、天文学的な数に及ぶ選択やで。それを1つ残らず正解のルートを辿って行けるか? 無理やな。じゃあ、正解のルートを辿るために、選択を誤るたびにその時間まで戻ってやり直すか? これも無理や。選択肢は無限やし、そもそも過去に戻る方法があらへんもん。思い通りの人生じゃなくても進むしかないねん。進んで行くと、以前つまずいた、似たような場面に出くわすことがある。その時、つまずかずに済む選択ができるように、失敗やら、挫折っちゅうのがあるんかなぁ。」
「誤った選択をしてもリセットできないRPG。それが人生なんですかね。」
「その失敗やら間違った選択やらを経験値にして、進んで行くことでレベルアップするんやな。リセットしたり、いつまでも立ち止まってたら、レベル1のまんまや。」
「立ち止まっていたら…レベル1のまま、か。」
しばしの沈黙の後、塁は晴れ晴れとした表情で2人に言った。 「ありがとうございました! あの日以来、オレはずっとあの日に立ち止まっていたんだ、って気付きました。オレ、また歩き出します!」
「そうか。頑張れよ、大投手 本多 塁。」
「いえ。野球はもうやりません。オレ、お2人の仲間に、カエリタインジャーになります!」
「…えっ?」
「…ええっ?」
『え―――――っ!?』
塁の予想外過ぎる発言に、綺麗にハモる2人。
「なんか感動してしまって。もっと2人のことを知りたい、もっと一緒に過ごしたい、そう思ったんです!」
「あの…自分で言うのもなんですが、一時の気の迷いだと思いますよ?」
「千鳥の言う通りや。やめとき。オレらの仲間になるなんて。」
「やめません! オレを仲間にして下さい!」
「無意識の選択ん時は出来ないけど、意識的にする選択の時はしっかり考えなアカンで? わかっとるか?」
「わかってます! オレ、世界一のカエリタインジャーになります!」
塁の意思は硬いようだ。
顔を見合わせる唐草と千鳥だったが、コクリとうなずきあい、
「わかった。まずバイトからな。」
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