第1章

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 「ねぇねぇ、知ってる? 最近この辺りに出没するっていう……」  「ああ、唐草模様とか千鳥格子の建設作業員みたいなカッコした怪しげな連中?」  「そうそう、それ。」  「え、何かそれ?」  「なんか、帰りたいのに帰れなくて困っている人の前に現れて、どんな手段を使ってでも帰してくれるらしいよ。」  「私が聞いたやつは、修学旅行から帰ってくると、簡単に校長先生の話みたいなのあるじゃん? それが思いのほか長くて、生徒がイライラし始めた頃、その派手な建設作業員もどき4人が乱入して、校長先生の口を粘着テープでふさいだり、手足をぐるぐる巻きにしたり、さらに止めに入った先生方にエアガン撃ちまくったとか。」  「あれ? 4人? 唐草と千鳥と、あとは?」  「蛍光ピンクとグリーンって言ってたかな?」  「私が聞いたのは、駅前で、急な豪雨で帰れなくなってる人達の前に、謎の2人組が大量の傘を持って現れた、って。」  「今度は2人?」  「うん。唐草と千鳥格子、頭には黄色いヘルメット、サングラスかけて、鼻と口も黒い布で覆った2人組だって。で、持ってきた傘を、そこにいた人達に無料で配ってたんだけど、配り始めたら綺麗に雨止んで、返品された傘の山に絶望してたらしいよ。」  「なにそれ、ウケる。」  「帰りたいのに帰れない人を帰してあげたいからって、エアガン乱射したり、傘配ったり…しないよね、普通。何が目的なんだろう、その人達。」  「さあ。なんなら聞いてみれば? そこに求人広告貼ってあるし。」  「うわっ、ホントだ。『求む ピンクとグリーン』唐草と千鳥が主体で、ピンクとグリーンはバイトなんだね。」  「で? 応募してみるの?」  「しないしない。てか、いつからバイトする流れになったわけ?」  「バイトって言えばさぁ……」  3人の女子高生がその場を離れるやいなや、1人の男性高校生が現れ、求人ポスターをはがして駆け出した。  (帰りたい…何が何でも帰りたいんだ。この人達なら…!)
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