第2章

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カエリタイ カエリタイ……  機械的な声が室内に響く。  「お、出動要請や。行くで、千鳥。」  唐草模様の作業服の男は、湯呑みをテーブルに置き、口元を黒い布で覆って立ち上がった。  唐草に続き、千鳥格子の男も準備を整え、立ち上がった。  「現場はどの辺りや?」  「今確認しますね。えっと…」  千鳥は携帯端末を操作し、出動箇所を調べる。  「対象が移動してるみたいではっきりとした場所は特定できませんが、ここから割と近い感じですね。」  「了解。ほな、向かってみよか。」  唐草がドアノブに手をかけた瞬間、ドアは勢いよく開き、それ以上の勢いで1人の少年が飛び込んできた。  「おっ、なんやなんや?」  「突然すみません! カエルンジャーとかなんとかいうのは…」  「カエリタインジャーならここです。帰宅戦隊カエリタインジャー。キミは?」  唐草が、少年の手に握られた求人ポスターに気付く。  「千鳥、バイト希望の子や。すまんな、今から出るトコやねん。現場近いらしいし、すぐ戻るから、中で待っててくれるか?」  「違います、バイト希望じゃなくて…」  「なんなら一緒に行くか? 千鳥ー、バイトくんのユニフォーム用意できるか?」  「えっ、ちょっ……」  「ピンクとグリーンがありますが、どちらにします?」  「今日のラッキーカラーが緑だったから、グリーン……」  「ではこちらを。」  「あ、どうも…じゃなくて、オレは…」  「それ着たら、ヘルメットかぶって、布で鼻と口隠して…」  「地下足袋履いて、サングラスで完成です。」  「あの…」  「顔を知られたらアカンから、身支度ちゃんとしぃや。」  「おかげでめっちゃ怪しいんですけどね。」  「ちょっと…」  「職務質問とかザラやもんな。」  「『正義の味方です』って答えたら、交番に連れて行かれそうになりますよね。」  「オレの話を……」  「正義の味方あるあるやな、それ。職質されそうになったら、近くの工事現場に飛び込むと、意外と紛れるからオススメやで。バイトくんも試し…」  「バイト希望じゃねぇって言ってんだろうがっ!」  一向に用件を伝えられない苛立ちをついに爆発させた少年。  一瞬の静寂。  今までの友好ムードは一変、唐草はサングラス越しに、射抜くような視線で少年を見据える。  「じゃあ、お前何者やねんっ!」
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