第2章

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 胸倉を掴まれ、怯むかと思いきや、少年は負けじと唐草を睨み付け、声を荒げた。  「まさか、オレを知らないヤツがいるとはな! テレビとか新聞とか見ねぇのかよ!」  「テレビ見ぃへんのかやて? 有名人のつもりか、このガキンチョが!」  「有名人だっつーの。マジで言ってんの? アンタ。」  「ごっめ~ん。マジ知らんわぁ。あ、有名って言ってもアレか? 音声と画像変えられて出てるようなヤツ?」  「誰が『少年A』だ! 本気でわかんねぇみたいだから教えてやるよ。オレは…」  「あ――――っ!」  それまでオロオロと2人のやり取りを見ていた千鳥が、少年を指差して叫んだ。  「どこかで見たことあるとは思っていたんですが、キミ、もしかして、白球学園の本多 塁くんではありませんか?」  少年の表情がぱっと明るくなる。  少年は、胸倉を掴んでいた唐草の手をすり抜けると、千鳥の両手を握り、上下にブンブンと振り回した。  「そうです! オレ、あの『本多 塁』です!」  「あの、ってどのやねん。」  「白球学園野球部のエース、本多くんですよ、リーダー!」  「野球部の本多? おー、あの本多か! 大物とか何とか騒がれてた、あの!」  「そうです! やたら自信満々のあの本多くんですよ、リーダー!」  「せやせや、めっちゃエラそうで!」  「可愛いげがなくて!」  「相当感じ悪い!」  『本多 塁!』  2人は綺麗にハモった。  散々な言われように、膝を抱えて座り込むというわかりやすいスタイルでいじける塁。  「あ、ああ、それはそうと、何か用が合って来たんですよね?」  空気を読んで、話題を変えようとする千鳥。  しかし、  「いやー、そんな有名人やのに、何で気ぃつかんかったんやろ。」 まったく意に介さず、唐草は疑問を口にする。  「地区予選の時は、毎日のように本多、本多聞いとったけど…」  唐草の言葉に、千鳥は何かを思い出したようにハッとなり、  「待ってくださいリーダー、彼は確か地区大会決勝の日に…」  「結局、お前んとこ、全国大会まで行ったんやっけ?」 カエリタイ カエリタイ カエリタイ カエリタイ……  室内に響く機械的な声が速さと強さを増す。  唐草と千鳥は顔を見合わせ、携帯端末を確認し、塁を見た。  「このカエリタイ反応は……」  「お前やったんか、本多。」
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