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「あ、ありました。『エース不在で惨敗』7月22日の朝刊ですね。」
「えーと、『地区大会決勝の朝、学校に向かう途中、自動車と接触。利き腕を負傷』…あー、そうやったなぁ。」
パソコンの画面から塁へと視線を移す2人。
「で、その日に帰ってやり直したい、と。」
「はい。その事故にさえ遭わなければ、確実に全国大会に行けたんです。」
「大物だ怪物だって騒がれていましたからねぇ。」
「そしてもちろん、全国一になり!」
「…そううまいコト行くか?」
「優勝旗を手に堂々凱旋するオレ! 3日3晩繰り広げられる祝賀会!」
「……さすがに3日3晩はないと思いますが。」
「そして、全プロ球団から1位指名され、憧れの球団に入り、1年目からレギュラー、スタメン、全ての賞を手にし、2年目からは早くもメジャー入り。もちろん大活躍。望むものは全て手に入る。そんな生活が待っていたはずなんです!」
「………おそらく、小学生のがよっぽど現実的なコト言うと思うわ。」
「あの日、事故に遭わなければ、こんな、物置小屋みたいな怪しげな場所を訪れて、ヘンテコな人達に小馬鹿にされることもなく、スター街道まっしぐらだったはずなんです!」
「…………ホンマ、いけ好かんやっちゃな。」
「……………激しく同意。」
「ん? 何か言いました?」
「いや、なんも。」
「ええ、なにも。」
しれっと答える唐草と千鳥。
塁も特に気にする様子もなく、話を続ける。
「帰りたいのに帰れなくて困っている人を、どんな手段を使ってでも帰してくれる、そう聞いて来ました。お願いします、オレをあの日に帰してください!」
「気持ちはわかりますが、我々は『帰宅戦隊』なんです。過去に帰りたいのにというのはちょっと…ねぇ、リーダー。」
「…できないこともないで。」
「えっ?」
「どうなっても構わんという覚悟があるなら、過去に帰したる。」
「ほ…本当ですか!?」
「何を言ってるんですか、リーダー。いくら我々でも、過去に帰すなんてこと…ま、まさかあれを使う気ですか? ダメです! あれは危険過ぎますよ!」
「過去に戻りたいなんて、とんでもないお願いをしているんです。危険なのは承知の上です!」
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