永遠の霧

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まさか、そんな。 あんぐりと開いた口。 信じられないものを見る目で、ふたりの全身を凝視する。 男性の方は、遥か前に音信不通となった青春時代の友人に瓜二つ。 隣の女性はというと、一昔前によくテレビや雑誌でよく見た有名人によく似ている。 彼のそんな驚きを二人は知る由もなく、丁寧な自己紹介をつけて二日ほど滞在させてほしいと言った。 勿論彼も断る理由などなく、すぐに部屋の準備に取り掛かる。 「手伝います」 女性は零れ落ちそうな優しい笑みで荷物の一つを持った。 「いえそんな…重たいし、私の仕事ですから」 「自分たちの荷物ですから」 それに、ふたりの方が早い、と言う無邪気な笑顔に負ける。 というより、彼女は彼の拒否が聞こえないかのように、小頃な荷物を持ち上げて歩き始めてしまった。 さあ行きましょう。何処へ持っていけばいいですか? 彼女は細い腕で重そうな荷物を軽々と抱え、どんどん彼を急かす。 もう一人の男性の行方を尋ねると、海へ遊びに行ってしまった、と少し寂しそうに微笑んだ。
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