嘘の街

永遠の霧

彼と、彼の友人たちが作り上げたとある一角。

限られた空間で、限られた人数で会話を交わし、夢を語り、愚痴を吐いて、あたたかい食事をとった。

笑いの絶えない場所だった。

日常に戻るたび『あそこに戻りたい』とため息が零れるほど、そこでの時間は楽しかった。

限りなく日常に近く、しかし浮世離れした場所。記憶でのイメージはそんなところだ。

「人生をやり直せたらなぁ、なんて、いつもぼやいてた」

しかし、そんなことはありえないのが現実だ。そんな夢を見ている間に、気付けばこんな齢だ。

「それでも懲りずに、未だに思うよ」

後悔が耐えない人生であると。

出来ることであればやり直したいと。

あの頃に戻りたい、と。