嘘の街

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どこからか現れた異能者が街に術をかけた。 すべての生命に何らかの意思疎通能力を与え、人からは怒りの感情を奪った。 通常人間の住む社会からかけ離れたこの街は訪れる者を選ぶ。 「招かざる者が居る一行は絶対に街に踏み入れることが出来ない。俺も人を乗せてきて、何度弾き返されたものかわからねえ」 「まさに秘境、か………とりあえず暫く滞在してみるよ。仲間も欲しいし。守り人はどうだい、一緒に」 「いんや、悪いが俺の領分はこの碧い空なんでね」 彼の逞しく焼けた人差し指は頭上を指し、その先には広大な青が広がっている。 得意げに笑う目元口元に、少年は失笑して応える。 「それは残念。君となら熱い夏を過ごせそうだと思ったんだけど」 際限のない天を泳ぐ男にしてみれば、この街はどうやら庭の一角に過ぎないようだ。 太陽のような笑みの隙間に白い歯が際立つ。 互いに拳を突き出し、軽いトスで別れを告げた。 「代わりに熱い日差しをお見舞いしてやるさ。元気でやれよ、モトリ」 「守り人とドラコもね。それじゃ」 「街で薬屋のキョウという奴にあったら伝えてくれ!お陰様で良くなったって」 「了解した」 ここから始まる物語。 そう、ここは嘘の街。かつての人が望んだ世界。
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