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「ひいぃっ」
思わず叫び声を上げて目を開ける。
外は相変わらず田園風景が広がり、太陽の位置すら変わってないように見える。
あの冷やし中華は何だったのか。思い返す冷やし中華はヌルヌルに腐った胡瓜と、糸を引くハム。形の崩れてしまった赤黒いトマト。
あんな物を口に入れようとしていたなんて。
乗客がいないのを良い事に床に唾を吐くが、もちろん出てきた唾は透明で綺麗な物だった。夢の中の話なのだから当然だ。
醜く腐っていった冷やし中華はよく見ると、扇風機の風に煽られたのとはまた違う動きをしている。中から黒い蝿が何匹も這い出してくる。薄焼き玉子にはびっしりと蛆がついていた。
そんな冷やし中華を前に、私は額から汗を流し笑顔で母親を見ている。
煩い蝉の声はいつしか蝿の羽音へと変わっていた。
「**ちゃんとずうっと一緒にいられるように、本物の神様にちゃあんとお願いしておいたからね」
赤い唇で母親は笑う。
母親の顔はその赤い唇以外何も無かった。
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