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「大丈夫?うなされてたわよ?」
思わず深酒をしてしまったのだろう。酷くうなされていた私を心配して、バーテンダーが起こしてくれた。
「すまない。水を一杯くれないか?」
バーテンダーは慣れた調子で冷たい水の入ったグラスを置いてくれた。
「酷い悪夢を見ていたんだ」
アルコールと煙草のヤニでで粘つく口に冷たい水を流しこむ。
ここは蝉の声も煩いディーゼルエンジンの音も聞こえない。静かなジャズが流れているだけだ。他の客も既に帰ったのだろう。
大きくため息をついて、現実に戻ってきた感触を確かめる。
と、店内のジャズがCDの傷だろうか、同じ場所を繰り返すように歌い始める。
「あら。これ、前から調子が悪かったんだけど、もうダメね」
バーテンダーが申し訳なさそうに笑うが、音楽を止める気配はない。
don't leave me alone
don'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleave
mealonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleaveme
alonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon'tleavemealonedon't
独りにしないで
「はい。お待たせしました。冷やし中華よ」
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