0人が本棚に入れています
本棚に追加
横断歩道で信号が変わるのを待っていた時に、赤信号に気づかず突撃してくる子どもが見えた。
年の頃は四、五才くらいであろう子どもである。
僕自身も大人から見れば子どもであろうけれど、彼ほど小さくはない。
彼は信号無視による恐ろしさを知らないと見える。
直ぐ側のトラックが痛みによる教訓を与えてくれそうではあるが、無情なことに彼の体はその痛みに耐えることは出来ずに、教訓を知る頃には挽き肉にされているであろう。
僕からすれば、全くの赤の他人で、信号無視をするという大悪人であり、助ける義理も義務もない。けれども、僕はハンバーグが大好物で、今日の晩ご飯もハンバーグの予定だ。目の前で挽き肉になる彼を好物を食べる度に思い出すのは、気分が悪くなりそうだった。
だから、僕は彼を助けたのだった。
人には理解されることのない力を使って。
最初のコメントを投稿しよう!