幼き日の巡り会い

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*** 「わぁぁあああああああっ!!」  青々と生い茂る木々の葉が頬を撫で、その微弱な揺さぶりすらも僕に恐怖心を受け付ける。懸命に両手で腕の半分程度の細さしかない枝にぶら下がっている。それが今の僕だ。 「おいおい。早く降りてこねえと、これも一緒に川に捨てるからなー!」  全長五メートル程の樹の中間、僕は真下から浮遊してくるその言の葉にブルブルと身を震わせていた。  擦り切れた腕はほんのりと赤く染まり、それを自分で見ているだけでも弱音が漏れそうになる。と言うよりも、実際は口から漏れていた。 「お、お願いだから……やめてよ」 「やめないね。お前みたいなチビが出しゃばってるのが一番むかつくんだ。ほらほら、早くしないとお前の鞄、落としちゃうからな。お前が落っこちるのが先か、これが先か、どっちかなー」  ぐすっと鼻が鳴る。  泣いていても仕方がない事は僕でも分かる。  でも、僕に立ち向かう勇気なんてない。  僕の足裏を見て笑う同級生の三人組は、言わば僕のクラスで最も喧嘩が強いと言われるいじめっ子達だ。  そう、僕は今、いじめられている。  授業中に挙手し、難しい問題に一つ正解した。ただそれだけ、たったそれだけが理由。  その問題を僕よりも先に先生に名指しされた三人衆の内一人が答えられなかったという、それこそ当てつけの様な理由で。
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