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シトリンのように輝いてる彼の傍に居る事で、自分も何かが変わってきているような気持になる。
たっくんがお皿の準備を始めたので、ハッとして盛りつけにかかったが、つい考え込んでしまっていた。
二人でカウンターに料理を運び夕食が始まると、今日も沢山おかわりをしてくれて人の為に作る喜びをヒシヒシと噛みしめている。
食後のコーヒーを運んでくれた彼は「何か気になる事あるの?」と聞かれてしまい、そういう野生の勘は鋭いみたいだ。
『先の事を漠然と考えて不安になっていた』
とは言えないし、実際はまだ何も起こってもないので、考えすぎと言われてしまえばそれまでだ。
やんわりと否定してコーヒーを口にしたが、彼は何か言われたのかと覗き込むようにこちらを見ている。
「いや、本当に何でもないから心配しないで」
勝手な想像で彼にまで心配をさせたくないし、何となく方向がズレてきてるというか『渡部さんと何かあった』と誤解が生まれても困る。
「俺、付き合って日にちが経過してもメイちゃんの好き度が増して……引かれるかもしれないくらい」
「それは私の方だけど……」
目を一瞬大きく開き驚いた表情をしたかと思うと、急に俯いて、ポツリポツリと話を始める。
「嬉しいけど絶対俺の方がヤバい。デザインの時にメイちゃんが浮かんで出来上がった物を渡す時、手にしてくれた人が幸せになってくれたらいいなとか、嫁に出す父親みたいな気分になったり」
自分の作品に愛着がわくのはごく自然な事だと思うし、好きでやっている仕事なんだから恥ずかしがるのも変な話だ。
「作り手にそんな想いが込められたジュエリーだと大切にしたいし、たっくんにお願いして良かったってきっと思ってるよ」
コーヒーを飲みながらそんな話をしていると、さっきまで不安だった私の気持ちが軽くなっていくような気がした。
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