第1話

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お互いに『告白』の場で精神的にパワーを消耗し、翌日は仕事という事もあり、余韻に浸る間もなく帰る事になった。 帰りの車内ではまだ実感がないのか、妙に緊張していた気がする。 マンションに着き、お礼を言って降りようとしたら「メイちゃん、これ」と、少しはにかんだ顔で小さな箱を手渡された。 特にラッピングされてる訳でもないので、買って来た物ではなさそうだが、渡したい物のようだ。 不思議そうに箱を覗き込むと「開けてみて」と言われ、素直に従うと中に細いチェーンの塊みたいな物が二つ入っていた。 一つめを取り上げると、真ん中にダイヤが一粒あしらわれたネックレスで、チェーンも鏡面仕上げでキラキラと反射して綺麗だった。 乱雑に丸まるように入っていた事からは想像できない位、高価そうな品物に驚いてしまう。 もう一つのチェーンを摘まみ上げると、ブレスレットでネックレスとお揃いで統一感もあり可愛いアクセサリーのセットだった。 「この位だと、洋服も選ばないし邪魔にならないと思って」 「これ……頂いてもいいんですか?」 思わぬサプライズに声が少し上ずってしまう。 「うん、良かったらつけて欲しい」 「あ、有難うございます。大切に使わせて貰います」 すぐにでも付けてみたかったが、今はスッピンなので仕上がりの悪さに幻滅させても申し訳なく、そのまま受け取る事にした。 「今度、良かったらつけてるとこ見せてね」と言われ、静かに頷いて車を降りた。 走り去る車を見送りながら、じんわり嬉しさがこみ上げてくる。 家に戻ると、まずは気合を入れ鈴と佐藤さんにメールを送る事にした。 内容は勿論『桐谷さんとお付き合いする』報告だ。 鈴には当然だが、佐藤さんと桐谷さんは友達なので、早く報告しないとすぐに知られてしまうだろうし、黙っているのも罪悪感で一杯になるから。 緊張しながら文字を打ち、落ち着かないので桐谷さんから貰ったばかりのネックレスを付け鏡で見てみる。 華奢だけとキラキラしててとても可愛い。 これくらいの大きさだと使いやすいし、嫌味もなくさすがだと感心しながらソッと外した。 鈴からは『おめでとう!今度ゆっくり聞かせてね』と、お祝いの返信だったが、佐藤さんからは何の連絡もなし。 何となく予想はしていたが報告は済ませたので、自分の中でも一区切りつける事が出来たような気がする。
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