第1話

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その日はそのまま寝てしまい、次の日は早速ネックレスとブレスを付け仕事に向かった。 何となくテンションがアガり、朝の掃除が終わりトイレに行った時も、思わず鏡をチェックしてしまうくらいだ。 掃除後の一服しようと自動販売機でカフェオレを買い、喫煙所でスマホを手に煙を燻らせていると、佐藤さんからメッセージが入りドキッとして画面を見た。 『今日は早番?遅番?』 内容の返信ではなく質問返しになってるので、不安に思いつつ早番だと返信を返すが、追加で『会うのは難しいです』という旨も入れておいた。 前の駐車場の件もあるので、念の為……と思ったが、さすがに正式に彼が出来たんだし来ないとは思う。 今日も頑張ろうと気持ちを切り替え店内に戻る。 ディスプレイを変え、接客に励みセール前で下見にくるお客様も沢山いたが、中には「点数が少ない物はなくなるよね」と買い上げに繋がるお客様もいた。 確かにセールの前に売れてしまう商品も多く顧客様だとご存じなので、セール前でも欲しいと思う商品は購入される人が多い。 あとはセールの日に仕事で行けない等の理由でお買い上げ下さる方もいた。 夕方までに予算をクリア出来たので、少しホッとした気持ちでそれからの時間が過ごせた。 今日は早番なので18時過ぎに帰りの支度をし店を出る。 従業員出入り口を通り、駐車場を横切ろうとすると、前と同じ場所に見慣れた車が止まっていた。 「佐藤さん……」 気まずい空気だが、何となく車に近づきお辞儀をしてしまう。 「お疲れ様、まさか来ると思わなかったでしょ」 微笑みながら窓から顔を出し、助手席に乗るように手招きされるが、ドアは開けバスで帰ると伝える。 「安心して、襲ったりしないし。話もあったから送るついでに隣で聞いてくれればいいよ」と言われ戸惑いながら助手席に乗り込んだ。 「あーあぁ、忠告も聞かず桐谷に決めるからショックでさ、昨日はマジでヘコんでた」 「ご、ごめんなさい……」 俯きながらバッグをキュッと握り、それ以上言葉が続かず無言になる。 「ただ俺としては、このままメイちゃんと連絡取れなくなるの嫌だし『相談役』になろうと思って。逢わなくてもいいから、たまにメールでやり取り出来る関係でいたいんだよ」 「…………」 はいと返事しづらい提案で逆に、何でそんな関係を続けたいのか疑問が浮かぶ。
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