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「だってこれからメイちゃん困ると思うし、多分半年以内で別れると思うから」
「――えぇっ!」
思わず声を上げたが、佐藤さんは普通の顔で運転しているし、付き合って間もなくそんな予言をされて不吉すぎるし、止めて欲しい。
――が、友達の佐藤さんは、私以上に桐谷さんの事を知り尽くしてる訳でピシャリと跳ね返す事も出来ない。
「ごめんね幸せな所に釘さして……あ、因みに桐谷からではなくて、メイちゃんが嫌になって別れるパターンね」
「は、はぁ……」
まだお付き合いすると決まったばかりで、何も始まっていないので不安ばかりが募ってくる。
佐藤さんは知ってか知らずか涼しい顔をして、別れるまでの間友達でいてその後付き合う作戦でいいと閃いたという始末。
「俺の予想は当たるよ、だって桐谷の事は手に取るように分かるから」
言い返しようもなく顔の筋肉がピクッと引きつり、心では暗雲が立ちこめブルーな気持ちで悶々としていた。
「俺からたまに連絡するから、メイちゃんは返事で近況教えてね」
「――はぁ」
先程しか同じ事しか言えてないが、本当に『はぁ』としかいい言葉が出て来ない。
「メイちゃんが更に熟すのを待つ哀しい役だけどね。俺は鈴ちゃん以上に桐谷の事分かるから的確なアドバイス出来るよ」
「なんというか……その、複雑です」
自分で薄っすら目頭が熱くなるのを感じ、少し涙ぐんでいる事に気づく。
「だから初めから僕を選んでおけば丸く収まったのに」
聞き始めは不吉だとか、そんな事とか思っていたが、佐藤さんは元々冷静だし、桐谷さんと付き合うという事も一応受け入れている。
なのに嘘を言って別れさせたいとも言い切れないのは、自分でもそんな予感が何処かでしているのだと思う。
――少年のような部分があって、掴みどころがない所がある彼に振り回され疲れてしまいそうな予感が。
「俺も、桐谷に決めたと言われた時点で諦めないとダメなんだろうけど。でも久々に顔見たら又、魅力的になっててこれでも辛いんだよ?」
「……全然そんな事ないですよ」
佐藤さんが特殊何だと思う。
動物的マニアックな勘が働くから『蜜』とか、妖艶的な想像を掻き立てられてしまうけど、私は何の取り柄もない至ってノーマルな女性だ。
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