第2話

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第2話

美味しそうな物ばかりがこれでもかと陳列してあり、場から浮かないように周りの様子を見ながら、初めは三種類くらいをお皿に乗せ隅の方に移動して食べた。 『……美味しい』 仕事終わりでお腹が空いてるのもあり、勢いがつくとお皿が綺麗になるとまた取りに行っては隅に戻って……を繰り返していた。 他の女性達は何度もおかわりをしてる人が少ないので、手を止める為にそろそろ飲み物でも取ろうかとドリンクコーナーを探した。 ボーイさんが持ってるのはお酒なので、何処かにジュースやお茶が集めてある場所がある筈だ。 キョロキョロしていると「どうぞ」と、お茶のグラスを目の前に差し出してくれる人がいた。 「あの、有難うございます」 「ウーロン茶だから大丈夫でしょ?ボーイに見向きもしてないからお酒飲めないんだと思って」 すぐにお辞儀をしたので顔を上げると、色白のスラッとした男性が立っていて緊張してくる。 目が少し薄いブラウンだし、ハーフさんかと思ってしまった。 英語は得意でないので、外国人さんが近づくと笑顔で逃げるタイプだ。 少し腰が引けていると、その人は半笑い気味で口を開いた。 「さっきから凄い勢いで美味しそうに食べてて、喉詰まらしたのかと思って」 「あ、いえ、お恥ずかしい所を見せてしまって申し訳ありません」 今日は桐谷さんのお供で来てるのに、恥ずかしい場面を目撃され、評判を落ちしてる場合ではない。 「このパイも美味しいですよ」 「えっ?本当ですか」 と思わず皿に入れていると、やっぱりクスクスと笑われてしまった。 一口食べてみると美味しくて顔が綻び、この会場の名物なのか知らないが、慣れてる人が勧めてくれるものは間違いないと納得していた。 「ねぇ、あなたは桐谷の知り合い?」 知らない人に、彼女と公言していいか躊躇われ、パーティに誘われたんでと濁しておいた。 「珍し……桐谷が女性の連れと来たの初めてだよ。でもあの辺にいる取り巻き達と違って可愛い感じだね……お洒落さんだし」 「いえ、とんでもないです……」 何となくこの人との会話を切り上げたかったのに、デザートも美味しいのあるから、あっちにも行ってみないと誘われ何種類かのスイーツを選んでくれていた。 全部美味しそうで遠慮なく頂いていると「美味しそうに食べて可愛いね」とまた半笑いだった。
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