第2話

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『あれ……まだかな』 また何か食べて時間を稼いだ方がいいのかなと考えていると、ハーフ顔の人がまた寄ってきた。 「まだみたいだし、もう少し話しても全然大丈夫そうだね」 隣に立ち、新しいノンアルコールの飲み物を持って来てくれた。 「あ、有難うございます」 結局お言葉に甘え受け取ってお礼を言うと、今度ランチにでも行かないと挨拶のように軽いノリで誘われてしまった。 ハッキリと桐谷さんの事を言ってしまった方がいい気もするが、さっきの様子だと仕事関係の人にプライベートを話しそうな感じでもない。 苦笑いで誤魔化しきれるだろうか、それとも『彼氏いるんでそういうのは』で断ろうか悩んでいると話が先に進んで行き焦りだした。 「デザートはアイスがいい?それともミルフィーユが美味しい所にする?」 覗き込んで来る彼に、目を逸らして困っていると「俺の連れを誘惑するのやめてくれる?」と背後で聞こえた思わずホッとした。 やっと来てくれたのもあり、ちょっと寂しかったので表情も明るくなる。 「邪魔が入って残念、またね!」 ハーフ顔の人が去って行くと分かりやすくしかめた顔をして口を開く。 「アイツしつこいくない?テラスに行く前から居たよね」 『えっ、どこから見てたの?いつから見てたの?』 不思議だったけど、仕事もこなしてたのでお腹が空いてないかと聞いてみる。 「いや、俺は何度か食べた事あるから今日はいいよ。そろそろ帰ろか、疲れたでしょ」 手を引かれ会場を後にする事になり、チラッと横顔を見たがいつもの桐谷さんの顔に戻っていて、あの時の冷たい瞳は消えていた。 「何か長引いてごめんね、結局一人にしてしまったし……」 「いえ、でも、お料理凄く美味しかったです」 「良かった!そこは気に入ってもらえて」 その後は会場の雰囲気の感想などを伝えながら車に乗り込んだ。
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