第1話

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「――てか、僕ら結構掘り下げた話してますよね?なんか恥ずかしい……」 「大丈夫、お互い誰にも言わなければいいんだし」と、ちょっとこの時間が楽しくなってきたていた。 私も鈴以外にプライベートは話さないので、新しい女子友が出来た気分だ。 神崎君もそんな風に考えて、毒を吐いたら楽になるかもしれないのにと、人生の先輩として役に立てばという気持ちになりかけていた。 「佐々木さんは、今気になってる人いるんですか?」 「えと、いる……かな」 急な質問で動揺しながら答えているけど、頭の中でハッキリと定まらず糸が絡まった感じだ。 「どんな人なんです?」 「可愛いけど大人な雰囲気もある人かな……」 箇条書きのように短い質問が次々に飛んできて、上手く話せているか自身もなくなるし、そもそも私はまだ悩んでいるのだと実感してくる。 「ハッキリ言われるとやっぱりショックですね……その人と付き合うんですか?」 神崎君は私の方を向いて話をして来るので、つられるように何となく向かい合って目を合わせる。 「うん、多分……でもまだよく分からない」 「迷ってる理由は何です?」 質問の答えが思い浮かばなくて口ごもっていると、今度は神崎君の方から振ってくれた。 「もしかして、大切にされていないとか?」 不意に言われるとドキッとする質問で、思わず目を泳がす。 出会ったその日に一夜を共にした彼と、身体の相性は大切だと言い切っていた彼。 大切にされてるかと言われると、機転を利かせてくれる部分もあるが、強引でもあって難しい所だ。 「身体の関係を求められて不安なパターンですか?」 「そういうのも、あるかもしれないな……」とつい本音が零れてしまう。 桐谷さんも佐藤さんも、私の事をどういう風に見ているんだろう。 「相手の気持ちはよく分かりますが、佐々木さん悩んでそうで、微妙なのかなって思っちゃいます」 ズキンとくる事を言われてしまい、今私の方が年下の気分だと顔の筋肉が引きつるのが分かった。
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