第2話

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「あの、もう、許して貰えませんか……」 囁くような声で必死にお願いしてみる。 波が押し寄せるのを見られるのも恥ずかしいし、凄くイヤらしい事をされている気がしてどうにかなってしまいそうだから。 「もう少し楽しみだいけど、俺もそろそろ我慢出来ない」 と言いゆっくりと重なり合う。 「――あっ」 何とか声を押し殺そうと口を手で塞いだのに、桐谷さんはそっと外して「もっと聞かせて」とを腕を奪う。 桐谷さんが動く度に声が漏れ、自分でも何処からこんな恥ずかしい音が出るのか不思議だけど止める事ができない。 大きな波に飲み込まれるような感覚で夜は更けていった。 朝になり目を覚ますと、桐谷さんは隣に居なかった。 服を着て部屋を出ると「おはよう」とコーヒーの準備をしてくれていた。 「おはようございます。すいません、熟睡してしまって……」 「全然いいよ、寝顔見てたらムラムラしてきたから起きてみた」 ニヤリと笑われると、昨日の断片が思い出されドキッとして顔が赤くなる。 「まあ、ちょっと照れくさいのもあったし」とコーヒーを置いてくれた。 朝でカーテンが開けられていると周りに木が多いのが良く分かり、緑が多く目に良さそうな景色だ。 二人でソファーに腰をかけてボ――ッと周りを眺める。 「こういうのも落ち着いていいな……」 思わず私も頷き、無言のまま暫くの間外を見つめていた。 その後シャワーを済ませ一旦私の家に荷物を置いて着替えると、二人でランチに行く事にした。 食事をしながら話をしていると楽しすぎて、気付いたらデザートが運ばれていた。 パンナコッタを堪能していると向こうの方から「おや、こんにちわ」と昨日のおじさんが近づいてきた。 今日は昨日みたいにスーツではなくカジュアルな服装だ。 「あ、こんにちわ」 昨日話した数少ない人なのでよく覚えている。 「――デートですか?」 と聞かれ返答に困りチラッと桐谷さんの顔を見ると、分かりやすく嫌な顔を前面に出しているので驚いてしまう。 「いやぁ、そんな楽しそうな顔は久々に見た。彼女の事余程気に入ってるんだね」と気にせず話しかけている。 このオジサンと知り合いなのは分かるけど、そんな露骨に態度変えなくても……思っていると「あ、コレ親父」とサラリと言われ心臓が跳ね上がりそうになった。
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